April 02, 2007

読み手との奇妙な一体感

綿矢りさ。早大卒業後の今は職業作家となり、待望の&初の長編小説がこの「夢を与える」。「蹴りたい背中」で第130回芥川龍之介賞を史上最年少の19歳で受賞した少女が次にどのような作品を世に出すのか、多くが期待と不安を抱きつつ待っていたのではないでしょうか。

色々な書評で書かれている通り、当の本人もほぼ書き終えた原稿を破棄するなど試行錯誤を繰り返したようで、最終的にたどり着いたこの作品に対する評価は比較的肯定的なものが多いようです。著者の体験を重ねたものという評もあってどんな内容なのか期待しながらほとんど一気に読んでしまいました。ヨーコさんが「せつない」と書かれていた気持ちもわかるんだけど、私としては「蹴りたい背中」からの延長線上にこの作品があるな、という著者の成長が如実に出た作品という気持ちが前に出てしまいます。敢えて言葉の定義をしておくと、「成長」であって「一皮むけた」とか「飛躍」じゃない…。母親と娘の男に対する執着についての描写や小説の長さを考えると、確かに成長したことを読み手に感じさせる作品です。多摩という同級生についての後半の描写は「蹴りたい背中」の延長線上にあるノスタルジックな感情であり、筆者が前作品を踏まえて新作を発表したという成長が感じられます。主人公「ゆうちゃん」の成長をCMを通して楽しむ視聴者と同じように、綿矢りさという文壇でアイドル視される作家の成長を楽しむ読み手がいる、と言う点で奇妙な一体感すら感じます。ただ、その成長振りにどこまで読み手がついていけるのか…これは今後の作家生命に関わる重要かつ不可避な課題でしょう。独特の世界観も10代の女の子なら受け入れてもらえるだろうけれど、20代、30代…とどのようにこの身を削る職業を続けていけるのか。恐らく次回作がそれを決めるんでしょうね。

一つだけ気になった点。初版を買ったせいでしょうか、誤植がありました。「肉体の関係」とすべきところ「肉の関係」に。これは出版社の責任ですね。


Posted by noriko at April 2, 2007 10:02 AM
コメント

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のりこさん

先日は皆さん個展に来てくださり有り難うございました。
私は偶然に「蹴りたい背中」を読んだばかりですが、「夢を与える」も是非読んでみたくなりました。
とぉくへ置いて来てしまった様な懐かしい記憶が蘇りました・・・とても繊細でいじらしくてイイナぁと思うのです。

Posted by: あきやま at April 17, 2007 12:15 PM

のりこさん
この本を読みました。「蹴りたい背中」を読んだ事を息子に話したら、彼も読んで興味を持っていたらしく「夢を与える」を買って来たので借りて読んだのです。読後感は皆さんにお任せして・・・私は子供達が幼い頃、ゆうこちゃんの母親に近い気持ちで子供と接していた事に気が付きました。でも否定する物ではなく今からの接し方に留意したいと思います。のりこさんの海規君に接する毎日の出来事にほっとする思いです。

Posted by: あきやま at October 8, 2007 10:22 AM
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