「心にナイフをしのばせて」。賛否両論の多い本だと知ってから読んだせいか、被害者家族の心の闇の深さにおののいたか、どっぷりのめりこみすぎることなく一定の距離を置いて読むことができました。
ご存知の方も多いかもしれませんが、神戸であの酒鬼薔薇事件が起こるずっと前、横浜で高校生が同級生を殺傷し、首を切断するという事件があったそうです。この本はその事件の被害者側遺族に焦点を当てたものですが、如何せん被害者家族にとってはまさに青天の霹靂、ショックの大きさによる自己逃避本能から記憶が欠落したり、実際に情報開示がなされていないことなどから筆者による取材によってかなりの箇所が補筆されたのではないかと思われます。
初めてこの事件、この本の存在を知ったときは加害者に対し理不尽な気持ちを抱きました。被害者が未だに苦しんでいるのに加害者は社会的に成功、それにも関わらず賠償など一切なし…。でも実際に本を読んで被害者家族の苦しみを垣間見た後となっては、先に抱いた気持ちに変化がありました。それはこの筆者の書き方の問題なのか、それとも私が天邪鬼なのか…一方的に加害者=一生悪者、という図式だけをつきつけられ、どうしてこの加害者はこういう事件を起こして今に至っているのか全くわからない。無論、加害者本人にすらわからないこともあるでしょうが、それでもわからないことだらけなのです。
本当は被害者家族の負った傷や闇の部分の余りの重さに私自身が「わからない」という逃げ場に逃げ込んでいるのかもしれません。ノンフィクション物って自分が理性的に分析できるようにならないと感想が書けないんですね。





